アスベスト(石綿)について
アスベスト

アスベストは断熱材等の材料として1960年ごろから1990年頃まで大量に輸入されていました。アスベストは一見すると綿とかガラス繊維のような物質で、化学的にもきわめて安定であり、有害性はなさそうに見えます。実際、アスベストに接触したり吸入したりしてもそれですぐに何かが起こることはありません。

ところが、アスベストはいったん暴露してしまうと体内に長期間とどまり、20−40年たった頃に色々な病気を起こしてくることが分かりました。その中でも最も重要なのは中皮腫です。中皮腫は、通常診断から数年以内に命を落とすことが多く、確実な治療法もまだありません。
現在1960年当時にアスベスト工場とか建築現場で暴露された方から中皮腫が発生しており、その数は年間1000件程度ですが急激に増加中です。今後40年間は過去の被爆による中皮腫の発生が続くと考えられます。
現在新たなアスベストの使用は禁止されてしますが、現在暴露歴のない若い方でも安心はできません。なぜかというと、すでに過去に生産されたものが現在の建造物などに建材、配管、断熱材等として大量に残っており、今後それらが順次解体、立て替えの時期を迎えるからです。中皮腫は少量の被爆でも発生することがあり、環境へのアスベストの飛散が続く限り、新たな中皮腫の心配は消えることはありません。

アスベストの暴露歴

中皮腫をはじめとするアスベストによる健康被害はいずれも暴露後20−40年以上立ってから発病することが多く、暴露していたことを忘れていた、あるいは子供の頃のことなのでそもそも知らなかった、等と言うことも起こりえます。自分自身の暴露歴を知ることはとても重要で、場合によっては家族の方に聞いたり、以前の職場に問い合わせたりすることも必要でしょう。

直接のアスベスト暴露を考える職業歴の例


間接のアスベスト暴露を考える場合の例


アスベストによる肺がんを予防するために

たばこを吸うと肺がんの発生率が10倍になると言われるように、肺がんの第一の原因はたばこですが、アスベストによる肺がんの発生率も5倍と言われ、アスベストも肺がんを作ります。では、たばこ+アスベストでは肺がんの発生率はどうでしょうか。実は10×5で50倍になってしまうのです。アスベストはいったん暴露してしまえば体から出すことは出来ませんが、たばこは今からでもやめることは可能です。アスベスト暴露歴の分かっている方は必ず禁煙しましょう。さらに、現代人でアスベストと無縁と言い切れる人がいない以上、禁煙は全ての人の問題でもあると思います。

アスベスト検診

アスベストの暴露歴のある方は検診を受けましょう。検診といっても、問診、診察して胸部のレントゲンを撮るだけです。もし胸部のレントゲンでアスベストが肺に入っている所見があれば、半年に一回ずつ普通のレントゲンで経過観察していきます。念のために胸部のCTを撮る事もあります。検診を受けていれば、万一病気が発生しても早めに対処できます。