気管支喘息 |
症状
気管支喘息の典型的な症状はぜいぜいする呼吸(喘鳴=ぜんめい)、咳、息切れです。症状は良くなったり悪くなったりすることが特徴で、ひどいときには息切れのために脂汗をかいて肩で呼吸していますが、調子が良くなると普通の人と同じように暮らせます。ここをクリックして喘息の呼吸音を聞いてみましょう。
症状の変動で有名なものは、季節による変動(季節の変わり目に悪くなる)、日内変動(明け方や昼前に悪くなる)、運動で悪くなる(運動誘発性喘息)、ストレス、ホコリ、花粉、特定の調味料の刺激などの誘因で悪くなる、などがありますが、原因不明のことも多いです。
小児喘息という言葉があるように、喘息は子供の病気と思われがちですが、実際には喘息の多くは成人、それも50歳以降に発症することも多いのです。子供の喘息はむしろ成長と共に症状が目立たなくなったり治ったりして減っていきます。子供の喘息はアトピー性といって、食事やホコリのアレルギーであることが多く、それらから遠ざけることが重要な治療になりますが、大人の場合には誘因物質がはっきりせずにおこる内因性喘息が多くなります。
診断
糖尿病は、血糖値を測って診断できますが、喘息は原因のよく分からない病気で、呼吸機能検査とか気道過敏性の検査など有用な検査もありますが、これがあれば診断できるというものではありません。結局は症状とか経過を見ながら、他の疾患を除外しながら診断をつけているのが現状です。そのため、初診の患者さんとか、喘息を発症してまだ間がないときなどは「喘息様気管支炎」等の今ひとつ曖昧な診断名をつけて様子を観察していることもよくあります。では喘息の診断はいい加減なものかというと、そうでもありません。やはり喘息という病気が存在することは厳然たる事実で、きちんと様子を見ていれば正しく診断できます。気管支喘息の呼吸機能の例はこちらに示してあります。
治療
先にも述べたように、喘息の治療には誘因の除去が重要ですが、大人の場合には原因不明のことが多いのです。また、ストレスを減らせとか職業を変えて、といっても簡単にはできませんし、それだけで100%治ることはまずなく、結局薬物療法はほぼ必須と考えられます。喘息の治療薬で最も重要なのは吸入ステロイド薬です。これは数ある治療薬の中でも最も根本治療に近い薬で、これによって喘息自体がおきにくい体になってきます。これは発作を抑える薬ではありませんから、発作があってもなくてもきちんと決められた量を使い続ける必要があります。
同じ吸入薬でも速効性で10分くらいで息切れがとれるタイプの薬もあります。これはすぐに息切れがとれて呼吸が楽になるのでとても有用なのですが、喘息自体が良くなるわけではないことに注意が必要です。正しく使わないと症状をごまかすだけの結果になり、いつか大発作などのしっぺ返しをもらうこともあるかも知れません。喘息の薬を使うときにはその役割をきちんと認識しておくことが必要です。
左は悪い治療の例です。喘息の誘因が来て発作が起きる度に発作治療薬(発作止め)を使っていますが、長期管理薬(吸入ステロイド)を使っていないためにベースとなる気管支の慢性炎症が続いてしまっています。この慢性炎症は誘因が続き、発作を繰り返す度に徐々に強くなっていき、それに伴い発作も小発作から中発作、ついには大発作にいたります。発作止めの使用量もどんどん増えてしまい、ついには頻回に使っても発作がコントロール出来なくなってしまいます。こうなっては自分での治療は無理で、夜中でも明け方でも救急病院に駆け込む(担ぎ込まれる)羽目になってしまいます。もちろん喘息死の危険性も高まります。
次に、良い治療の例を示します。
この例ではきちんと長期管理薬を使っています。悪い治療の例と同じように、最初は誘因が来て小発作が起きていますが、長期管理薬をきちんと使っているので気管支の慢性炎症は徐々に軽くなっていきます。それに伴い、誘因が来ても発作が起きにくい状態となり、発作止めの使用量も減っていきます。ついには慢性炎症がほとんどなくなってしまい、誘因が繰り返し来ているにもかかわらず、喘息発作が全く起きない状態になっていきます。こうなればしめたもので、長期管理薬もだんだんと減らしていくことが出来ます。喘息の体質は長期間続くものですので、長期管理薬もすぐやめてしまうのではなく、しっかりと使い続けることが大事です。
気管支喘息周辺の病気
◇夜間喘息 夜間だけ悪くなる人もいて、夜間喘息と言います。日中は良くなってしまうので、お医者さんに受診したときには診察しても検査でも何でもないこともあり、十分に薬を出してもらえないかも知れません。夜のことまでなかなか聞いてもらえませんから、自分から、夜の状態を説明するようにしましょう。
◇咳喘息 最近話題になっているものに咳喘息があります。喘息と違い、症状は空咳だけなのですが、通常の治療はあまり効果がなく、むしろ喘息の治療が効きます。咳喘息は放っておくと本当の喘息に変わっていく場合もあると言われており、要注意の病気です。
◇胃食道逆流 口から入った食べ物は食道を通って胃にはいるわけですが、胃食道逆流とは文字の通り、胃液が食道に逆流して胸焼けを起こす病気です。喘息と言われている人の中に、胃食道逆流が原因になっている場合があります。この場合には胃酸を抑える薬で治療することで喘息の症状が良くなります。結果的には喘息ではなかったということになります。
◇慢性閉塞性肺疾患(COPD) 気管支喘息と同じように咳、痰、息切れが出る病気だし、治療も似ているので間違われやすい病気です。気管支喘息との大きな違いは、症状が固定性で同じ程度の息切れがずーっと続くことです。原因の多くは喫煙で、60−65歳くらいで発症し、時間と共に進行します。治療も経過も気管支喘息とは異なりますので、しっかりと区別しておく必要があります。